研究概要 |
抗原提示細胞内においてMHCクラスII分子の制御は、自然免疫のみならず獲得性免疫系の賦活化にとって重要である。本研究で、インターロイキン6(IL-6)とそのシグナル伝達による樹状細胞のMHCクラスII分子(MHCII)発現について検討した。C57BL/6マウス骨髄由来DC(BMDC)をIL-6で処理すると、DC中のMHCII α,β-dimerの総量が処理時間依存的に減少した。そこでIL-6のレセプターであるgp130分子内のチロシン残基をフェニールアラニンに置換した変異gp130を発現するBMDCを用いたところFxxQ BMDCでは、MHCIIの減少は見られず、F759 BMDCでは、より強く減少した。これらのことからIL-6によるMHCII α,β-dimer量の減少にはgp130を介するSTAT3の関与が強く示唆された。さらにこれらの原因因子を同定するために、MHCII分子のプロセッシングと深い関係があるリソソームプロテアーゼ、cathepsin(cat.)に着目した。F759 BMDCをIL-6で処理することでcat. B, Lの遺伝子レベルおよびcat. Lの蛋白レベルの増加を確認した。またin vitro系で酵素活性を測定したところ、cat. L, Sの活性が増加することを確認した。さらにcat.Sの遺伝子をレトロウイルス法により、BMDCに強制発現させたところ、細胞内MHCII分子の低下、LPS刺激による細胞表面でのMHCII発現増強を阻害した。以上の実験からIL-6がDCのプロテアーゼを賦活化する作用を持つこと、DC内のMHCII α,β-dimer量を減少させることが分かった。またDCをIL-6処理することでLPS刺激による細胞表面へのMHCIIの発現増強が阻害されることから、獲得性免疫系の賦活化に対してもIL-6は影響することが示唆された。
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