研究課題
若手研究(B)
1.HTLV-I感染の感受性を亢進させる細胞性因子をコードしていると思われるcDNAの塩基配列の決定し、遺伝情報データベースを検索して遺伝子を同定した。今回同定できた2つのcDNAのコードしている蛋白質はどちらも細胞表面プロテオグリカンのシンデカン1とシンデカン2であった。2.今回同定したシンデカンの同族分子、シンデカン4も同様にHTLV-I感染の感受性を亢進させる効果をもっていることを明らかにできた。3.同定したHTLV-I感染の感受性を亢進させる細胞性因子とその同族分子のmRNAの発現をいろいろの培養細胞で調べた結果、調べた細胞すべてにおいて、シンデカン1の発現が認められ、また細胞表面プロテオグリカンとその同族分子は、異なる構成比で種々の細胞株に発現していることが検出できた。4.HTLV-I感染の感受性を亢進させる細胞性因子とウイルス粒子との結合性に関してはこれらの分子の持つ糖鎖(硫酸化多糖)が重要な役割を果たしていることを明らかにできた。5.数種類の硫酸化多糖を用いて、HTLV-I感染におけるその影響を調べたところ、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸がHTLV-I感染の感受性を亢進させることを明らかにできた。その他のコンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸にはその作用は認められなかった。6.プロテオグリカンに結合性のある蛋白質である繊維芽細胞増殖因子のFGF-2がHTLV-I感染を特異的に抑制することを明らかにできた。7.1-6の結果をもとにHTLV-I感染の機構についての論文を現在作成中。