研究概要 |
本研究は,肺炎クラミジア感染症の検査診断法として,日常診療で利用できる簡便な迅速診断法の開発を目的に展開するものである。検体中の抗原あるいは抗体を免疫学的手法により検出することが可能なアッセイ系を構築しようとするものであり,本年度は,菌株間の多様性がほとんどなく,構造上免疫原性が高いであろうと考えられる封入体膜タンパク質inclusion membrane protein (Inc)ならびに抗主要外膜タンパク質major outer membrane protein (MOMP)に対する抗体や抗基本小体elementary body (EB)抗体を用いて肺炎クラミジア抗原を検出する系を構築し,測定系の感度や特異性をはじめとする種々の評価を行った。 本年度は,まず,家兎を用いて作製した抗EB抗体,抗MOMP抗体,抗IncA抗体および抗IncC抗体の精製を行い,immunoblot法などにより抗体の特異性などの免疫学的性質について解析を行った。その結果,抗EB抗体ならびに抗Inc抗体は,抗MOMP抗体に比べて特異性が低く,肺炎クラミジア抗原を免疫学的に検出する系を構築することは困難であることが示唆された。また,肺炎クラミジアを感染させたHEp-2細胞をカルノフスキー液で固定した後,これらの抗体を用いて免疫組織染色法などによる標本を作製して電子顕微鏡下で観察した結果においても,抗Inc抗体ならびに抗EB抗体と肺炎クラミジア封入体との反応性は乏しいものであった。そこで,抗MOMP抗体を用いて肺炎クラミジア抗原を検出するための酵素免疫測定系を構築し,より高感度に肺炎クラミジア抗原を検出することが可能な条件を検討している。
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