研究概要 |
動物モデルを用いたグレリン分泌機構の検討 ムスカリン受容体タイプ3(M_3)欠損マウスでは、血漿グレリン濃度に有意な変化を認めないものの、胃粘膜中グレリン濃度が有意に上昇していた。また、2型ヒスタミン受容体(H_2)欠損マウスでは、血漿グレリン濃度に有意に上昇し、胃粘膜中グレリン濃度が有意に低下していた。一酸化窒素(NO)合成阻害薬であるL-NAMEをラットに1週間投与したところ、血漿グレリン濃度が有意に上昇した。以上より、グレリンの分泌調節に迷走神経や末梢のNO産生神経が密接に関与し、グレリンが脳腸相関のキーファクターとなり得る可能性が示唆された。 慢性胃炎患者におけるグレリン動態の検討 国立循環器病センターの寒川らとの共同研究により確立した高感度のRadioimmunoassayを用いて69名の慢性胃炎の患者に対し,内視鏡施行時に血漿グレリン濃度,血清ペプシノーゲンI,II濃度を測定したところ、H.pylori除菌前群と除菌後群の2群間は血漿中グレリン濃度に有意な差を認めなかった。特にH.pylori除菌後群において内視鏡的に胃体部まで萎縮が進行している群(open type atrophy群)ではそうでない群(closed type atrophy群)と比較して、有意に、血漿グレリン濃度が低値であった。また、血漿グレリン濃度は血清ペプシノーゲンI濃度、ペプシノーゲンI/II比と有意な相関を示した。 (Suzuki H, Masaoka T et al. Hepatogastroenterol. 51:1249-1254,2004.) また、高度萎縮性胃炎の一症例についてH.pylori除菌後の2年間にわたって血漿グレリン濃度を詳細に追跡したところ、著明な変動を認めなかった。 (Masaoka T et al. Hepatogastroenterol. 52:1-4,2005.) 以上より、血漿中グレリン濃度が安定した萎縮性胃炎のマーカーとなりうる可能性が示唆された。
|