研究概要 |
1.大腸粘膜細胞に発現するNox1 oxidaseの酵素本体と細胞質成分の同定 実験には、モルモット初代培養大腸粘膜上皮細胞とヒト大腸がん細胞株(Coco2,T84)を用いた。モルモット大腸粘膜細胞には、Nox1、NADPHオキシダーゼの構成因子であるp22-phox,p67-phox,rac1、さらに新規構成因子p41-nox,p51-noxが発現していること、同細胞は,目発的に多量のO_2^-を産生することを明らかにした。一方、ヒト大腸がん細胞株は、p67-phox,p41-noxを発現しておらず、ほとんどO_2^-を産生していなかった。そこで、これらの細胞にそれぞれの因子の遺伝子を導入し、Nox1オキシダーゼの再構成実験を行った結果、p41-noxを過剰発現させることで、O_2^-産生能を獲得することを見いだした。 2.大腸粘膜上皮細胞に発現するTLRファミリーと自然免疫応答を誘発する菌体リガンドの同定 これまでの研究で、大腸粘膜上皮細胞、ヒト大腸がん細胞株には、TLR2,TLR4,TLR5が発現していること、同細胞は、TLR5のリガンド、サルモネラ菌のflagellinに反応し多量のO_2^-を産生するが、ペブチドグリカン(TLR2リガンド)、LPS(TLR4リガンド)には反応しないことを明らかにしている。今回、大腸がん細胞株T84細胞を用いて、flagellin-TLR5経路によるO_2^-産生機構を明らかにするため、flagellinによるTLR5シグナルを解析した。その結果、flagellinは、TAK1 (transforming growth factor-b-activated kinase 1)とTAK1結合タンパク質1をリン酸化し、Nox1の発現を誘導することで、T84細胞にO_2^-産生の増大を誘導していることを見いだした。
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