研究実績の概要 QT延長症候群ではLQT1の一家系で80歳を越えて発症した症例で遺伝子異常が確定された(KCNQ1 V254M)。この家系において発端者は12歳で発症していたが、その祖父は81歳での初発で、同一遺伝子変異ながら発症様式が非常に異なった家系であり、発症には遺伝子変異のみでなく、自律神経系、電解質異常など様々な環境要因が非常に重要な影響を与えると考えられた。 Brugada症候群では臨床的な事項として、発症リスクの評価・発生機序についての検討を行った。リスク評価として各種臨床的指標(心電図、加算平均電位図)を組み合わせ、心室細動の誘発を無症候性患者で推測し、良好な感度、特異度が得られた。また薬剤負荷による特徴的な反応を無症候例、有症候例で検討を行い、Naチャネル遮断薬投与後の心室性不整脈の発生およびT波交代現象がリスクの高い症例で認められ、リスク評価のための一つの指標と考えられた。発生機序の検討としては電気生理学的検査による誘発および心室性不整脈の発生起源が心室の中で非常に部位特異性を有し、特に右室流出路でその異常が強いことを報告した。この右室流出路の異常は他にも12誘導心電図、体表面電位図でも同部位の再分極異常としてとらえることが可能であった。また洞機能異常も高頻度に見られ、特に洞結節-心房間の伝導障害が予測された。このようにBrugada症候群の発生基盤に脱分極・再分極異常が複雑に絡み合っていることが推測された。現在遺伝子解析についてはNaチャネル遺伝子を中心として解析中である。またQT延長症候群およびBrugada症候群の総説が掲載された。
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