研究概要 |
研究I:(1)培養マウス肺がん細胞の一つであるLewis lung cancer cell(LLC)におけるRho遺伝子の働きを調べるためにレトロウイルスによるRhoA, C, dnRho(RhoC dominant-negative),GFP遺伝子導入を行い、各遺伝子導入細胞群とコントロールとして遺伝子導入を行わないParental(LLC)細胞群の5群に分けてTranswell Biocoat Control Chamberを用いて遊走能を測定し、Biocoat Matrigel Invasion Chamberを用いて浸潤能の解析を行った。(2)転移メカニズムを調べるために、各遺伝子導入細胞のMMPsの発現をRT-PCR法を用いて検討を行った。さらに各遺伝子導入細胞のMMPsの活性の評価をGeratin Zymographyを用いて行った。 結果:(1)遊走細胞数および浸潤細胞数共にParental群に比較してRhoC群において増加を、dnRho群において減少を認めた。(2)Parental細胞群と比較してRhoCを導入したLLC細胞ではMMP-2,MMP-9,MT1-MMP, TIMP-2の遺伝子発現レベルの上昇を認めた。MMPsの活性を調べた結果、RhoCを導入したLLC細胞において潜在性MMP-2,MMP-9,活性型MMP-2の活性の亢進が認められた。これに対してdnRhoを導入したLLC細胞ではMMPsの活性の低下を認めた。 研究II:RhoC dominant-negative遺伝子導入がin vivo同所性非小細胞肺がんの転移抑制に有効かどうか明らかにするためにC57/BL6(6-8週令、雌)マウスを用いて、LLC遺伝子導入細胞を直接肺内に投与し、肺がんモデルマウスを作成した。モデル作製後10,14,21日後にsacrificeし、原発腫瘍体積、縦隔リンパ節転移重量ならびに組織学的解析を行った。 結果:モデル作製後21日目において原発腫瘍体積は、各遺伝子導入群とParental群との間に有意な差は認められなかった。これに対して縦隔リンパ節転移重量はRhoC群において有意に多く、dnRho群において有意に少ない結果を認めた。 考察:以上の実験結果よりRhoC遺伝子が肺がんの縦隔リンパ節転移を促進し、 MMPの活性が深く関与していることが明らかになった。
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