研究概要 |
Otxファミリー(Otx1,Otx2,Crx)は脳や眼の形態形成および神経内分泌系の機能発現に重要な役割を果たすことが知られているホメオドメイン型の転写因子である。申請者らはOtxファミリーに属する新規転写因子Otx3を単離し、他のアイソフォームとは異なり転写抑制因子であることを既に同定している。(J Biol Chem 277,2002)。Otx3の神経内分泌細胞における作用機構を明らかにするため、その転写抑制機構について詳細に検討した。 本研究において、Otx3はOtx2の存在下、モノマーやホモダイマーをほとんど形成せず、ヘテロダイマーを形成することによって、Palindrome3配列(<TAAT>(N3)<ATTA>)に結合し、Otx2の転写活性化能を抑制することが明らかとなった。さらに、Otx3のさまざまな欠失変異体を用いて、その転写抑制作用には、Otx3のホメオドメインを含むN末端側156アミノ酸が必須であることを証明した。胎生期のマウス(胎生10.5日)において、Otx3とOtx2は中脳および間脳で共発現することが認められたことから、Otx3とOtx2は発生期の脳において、相互的に作用すると推定される。続いて、Otx3の結合塩基配列を同定するため、random binding site selection法を行った。その結果、Otx3はOtx1やCrxの結合配列であるPalindrome3配列だけでなく、Tandem repeat4-6配列(<TAAT>(N4-6)<TAAT>)にも結合することが判明した。ゲルシフトアッセイを行った結果、Otx3はOtx2の非存在下、モノマーおよびホモダイマーとして、これらの配列に結合することが明らかとなった。従って、Otx3とOtx2が共発現する部位では、それらは主にヘテロダイマーを形成して標的遺伝子の転写を調節するが、Otx3のみ発現する部位では、モノマーおよびホモダイマーを形成して、Palindrome3やTandem repeat4-6配列に結合することにより作用を発揮すると考えられる。これらの結果は、Otx3の標的遺伝子を探索する上で非常に有用な情報である。 以上の研究成果は国際的な学術雑誌の原著論文(FEBS Letters 579,2005)として発表されている。
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