研究課題/領域番号 |
15790483
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
内分泌学
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
大久保 由美子 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (80287317)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | IGF / 受容体 / 甲状腺癌 / 先端巨大症 / IGF-I / 細胞機能 |
研究概要 |
腫瘍におけるインスリン様成長因子(insulin-like growth factor; IGF)の役割の解明として、分化型腫瘍である甲状腺乳頭癌組織における1型IGF受容体(IGFIR)タンパクおよび核酸発現について検討した。対象は手術時に得られたヒト甲状腺組織である。IGFIRタンパク量は非腫瘍部に比し、乳頭癌では1.4〜2.5倍に増加しており、血中成長ホルモン(GH)およびIGF-1値が高値である先端巨大症に合併した甲状腺の癌および良性腫瘍でも同程度のIGFIRタンパクを有していた。ただし先端巨大症症例からの甲状腺組織では、非腫瘍部ではIGF1R発現量は低下していた。またmRNA発現量は、全ての症例で非腫瘍部に比し腫瘍部で1.3〜4.5倍と検体間差を認めた。 次にIGF1Rの機能解析として、外因性IGF-I刺激に対するIGFIRリン酸化能をin vitroで検討したところ、非腫瘍部および腫瘍部ともに無刺激の状態の1.3〜1.8倍のリン酸化を認めた。これに対して先端巨大症に合併した良性腫瘍ではIGF-1刺激によりIGFIRは3.8倍に増加した。 さらにラット株化甲状腺細胞を用いて、外因性IGF-I添加によるIGF1RmRNA発現の変化を検討したところ1nM〜1000nM IGF-Iは用量依存性、時間依存性にIGF1R量を減少させた。 以上のことから甲状腺乳頭癌の腫瘍発生・発育にIGF1Rの発現増加が関与している可能性が示唆された。また慢性的に高レベルのIGF-Iにさらされた先端巨大症における甲状腺組織ではIGF1Rはnegative regulationを受けていたが、in vitroの結果もこれを裏付けるものであった。先端巨大症の腫瘍部におけるIGF1Rの増強と良性腫瘍におけるIGF1Rの機能亢進は、甲状腺分化癌および良性腫瘍の発生機序へのIGF/IGF1Rシステムの関与を示唆した。 またIGF-Iの生理作用および生物活性を解析する系として、IGF1Rの活性化を定量分析する方法の確立を試みた。IGF-I刺激に対する初期応答遺伝子のひとつであるc-fosの発現を検討するため、c-fosプロモーター部位をレポーターであるルシフェラーゼcDNAの上流に組み込んだDNA constructを作成し、ヒトIGF1Rを過剰発現させたマウス線維芽細胞株に遺伝子導入させた。この細胞をクローニングし、IGF-1用量依存性にルシフェラーゼ活性が上昇することを確認した。今後はこの系を用いて、低血糖を呈するIGF-II産生膵外腫瘍(non-islet cell tumor hypoglycemia; NICTH)をはじめとして、IGFの作用異常が考えられる病態の解明を行う予定である。
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