研究概要 |
好酸球によるがん細胞認識にフィブロネクチンが関与しているかどうか検討するために、サイトカイン産生能を調べた。方法としてフィブロネクチンで5時間刺激後、各種サイトカイン抗体をもちいて細胞内サイトカインをFACSで測定した。その結果、TNF alpha量が弱いながらも上昇しており、好酸球ががん細胞表面のフィブロネクチンを認識してTNF alphaを産生し抗腫瘍活性を示す可能性があることを示唆している。申請者らは既に、好酸球増多マウス(IL-5 transgenic mouse)が、移植された肝がん細胞に対して抗腫瘍活性を示す際、TNF alpha産生を増強していることを報告しており(Kataoka et al. DNA and cell biology,2004)、この結果を支持するものである。 さらに、好酸球が炎症や腫瘍組織へ移動する際、フィブリノーゲンやフィブロネクチンを認識しているかどうかを検討するために、遊走試験を行った。その結果、未刺激に比べフィブリノーゲンやフィブロネクチンいずれに対しても1.3倍程度遊走活性が認められた。 前年度、好酸球がtoll-like receotor4を発現していることを認めたので、寄生虫認識にtoll-like receotor4か関与しているかどうかを検討するため、toll-like receotor4を発現している培養細胞を寄生虫(Leishmania major, Leishmania amazonansis)で刺激し、ルシフェラーゼジーンをレポーターとしてそのインタラクションを調べた。その結果、Leishmaniaの培養ロットによって刺激の強さが異なっており、培養条件の違い、おそらく培養密の違いにより、寄生虫表面の糖鎖・脂質の形状が異なっているのではないかと考えられる。このことは、寄生虫感染成立には、生体内における寄生虫自身の表面抗原の状態が重要である可能性を示唆している。
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