研究概要 |
低出生体重児では、成人期に入って高血圧などの心血管性疾患を合併することが報告されている。本研究では、胎児期の発育環境の悪化が胎児の健康状態に及ぼす影響を検討するため、ニワトリ胚を用いて、胎生後期にエピネフリンを継続投与した。エピネフリンを生理食塩水で溶解し、3種類の濃度(10^<-4>mol,10^<-5>mo1,10^<-6>mol)を作成し、艀卵11日から15日にかけて投与した。艀卵19日に解剖し、肺動脈病変を検討した。前年度までの成果で、投与したエピネフリンの濃度が高い群で、肺小動脈の中膜の肥厚が認められることが明らかとなった。これは肺高血圧症の組織分類であるHeath-Edwards分類のgrade IIに相当するものであった。本年度はそれに基づき以下の研究を進めた。血清中のエピネフリン濃度はエピネフリンの投与濃度に比例して、有意に上昇していた。また、心臓の右室/左室重量比も、エピネフリン濃度に比例して、増加していた。これらの結果から、胎生後期のエピネフリンの過剰が新生児の肺高血圧を引き起こす可能性が示唆された。免疫組織染色法を用いて、エピネフリンの過剰状態で発現されるメカニズムを検討した。ヒト肺高血圧で報告されている、BMPR-IIの発現欠失は負荷群、コントロール群いずれも認められず、BMP2,4,6の発現パターンも負荷群、コントロール群で差異を認めなかった。PECAMを用いて、肺動脈中膜の細胞増殖を検討した結果、エピネフリン投与群では、コントロール群に比べ、PECAMを発現した細胞数が有意に増加していた。このことより、肺小動脈中膜細胞はエピネフリン負荷により細胞増殖が亢進し、その結果、中膜肥厚をきたすが、BMPR-IIの経路は影響を受けていないと考えられた。
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