研究課題/領域番号 |
15790564
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
皮膚科学
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
中村 哲史 旭川医科大学, 医学部, 助手 (20292112)
|
研究期間 (年度) |
2003 – 2004
|
研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
|
配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2004年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
2003年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
|
キーワード | Ca2-ATPase / SERCA2b / ダリエー病 / 角化異常 / 遺伝子治療 / Ca2+ATPase |
研究概要 |
現在我々は、Ca2+ホメオスタシスに関与する酵素としてダリエー病の原因となっているCa2+ATPaseについて検討をすすめている。最近の報告で、SERCA2bはSERCA1と同様にDimerとして働いており、異常遺伝子産生SERCA2bが正常SERCA2bの発現を抑制したり、促進したりする可能性が示唆されている。このため、本病態の遺伝子治療の可能性は、それぞれの詳細な検討によってのみ、可能であると考えられる。 最近我々は、I274V、L321F、M719Iの点遺伝子変異ダリエー病を発見し、これら遺伝子異常の生化学的なATPase活性、Ca2+取り込み量、リン酸化酵素の異性化の検討、さらに小胞体内Ca2+濃度増加による酵素の機能抑制などを注意深く行った。結果、これらの遺伝子異常SERCA2bは正常に小胞体に発現し、品質管理による分解システムを逃れた、正常な高次構造を持つことが示された。さらに、これらの異常SERCA2bではわずかなATPase活性の低下、リン酸化中間体の異性化の促進、リン酸化中間体の加水分解の速度低下、小胞体外側と内腔側のCa2+親和性の変化などを確認した(K Satoh et al. 2004 JBC)。 これらのI274V、L321F、M719I異常SERCA2bはdimerとしての機能を保持していることが予想される。これらの異常によりおこる細胞死につき、正常SERCA2bをco-transfectionし、細胞死の抑制が起こるか、また、さらに、異常SERCA2bを導入した細胞に紫外線をあて、それによる細胞死と正常遺伝子導入による細胞死抑制を検討した。 結果、異常遺伝子は、正常SERCA2bと同様にCOS-1細胞に発現した。発現した酵素を、活性を維持したまま、プレパレーションを行い、Western blottingでほぼ同量の発現を確認した。正常SERCA2bとI274V、L321F、M719Iの発現割合を検討するために、613X異常遺伝子をマーカーとして、正常:異常を1:0.5から1:1.5までの割合で導入発現を変更することが可能であることを確認した。COS-1細胞に異常遺伝子を導入した場合は、細胞死が正常の20-30%程度おこり、この細胞死は正常SERCA2bを1:1で導入しても、抑制されなかった。これらの細胞死はDNA Ladderで検討すると、アポトーシスを起こしていた。さらに長波紫外線を60mJ/cm2当てることにより、I274V、L321F、M719Iいづれもさらに細胞死を促進し、40-60%まで低下した。DNA laddarを起こしており、これらも、アポトーシスと考えられた。この紫外線による促進した細胞死はI274Vでは、正常SERCA2bを1:1で導入しても、抑制されなかったが、L321F、M719Iは30%程度(正常SERCA2b導入でも抑制されない程度)まで細胞死を抑制した。Laddarの形成も抑制され、アポトーシスを抑制したことが確認できた。これらの結果は、我々の発見した少なくともI274V、L321F、M719Iの異常遺伝子は少なくとも正常な高次機能を持っており、さらに、紫外線などの外的刺激により、ダリエー病での特徴的なアポトーシスが誘導され、また、L321F、M719I遺伝子異常では、正常遺伝子導入により、異常遺伝子の機能をある程度回復する可能性が示された。 これらの結果は、異常遺伝子の変位部位によっては、遺伝子治療の可能性も示唆され、この治療は完全回復まではできないものの、増悪因子による皮疹の増悪には効果的であることが示唆された。
|