研究概要 |
ステロイド添加状態における表皮細胞,血管内皮細胞における他のサイトカインや転写因子の動きを検討するための,第一段階として,ハプテンやサイトカイン刺激による血管内皮細胞と表皮細胞の接着分子の発現を検討した.蕁麻疹で肥満細胞から放出されるヒスタミンや末梢神経で放出されるサブスタンスPで,ヒト微小血管内皮細胞(HDMEC)を刺激したところP-selectinの発現がフローサイトメトリーや共焦点レーザーで確認された.また,アトピー性皮膚炎でサイトカインパターンがTh2タイプに傾くことから,Th2タイプのサイトカインであるIL-4やIL-13でHDMECを刺激したところ,ヒスタミン同様にP-selectinの発現が確認された.炎症性サイトカインであるIL-IやTNFで刺激しても,P-selectinの発現増強は認めなかった.P-selectinのプロモーター領域に転写因子Stat6があることから,HDMECをもちいてゲルシフト法を行ったところ,IL-4やサブスタンスP刺激したHDMECにおいてStat6の活性化,核内移行を認めた.stat6の活性化を止めるとP-selectinの発現がどう動くかを検討するために、上記の実験系にstat6 decoyを加えてみた。Stat6 decoyで前処置したHDMECにIL-4やサブスタンスPを添加してもP-selectinの発現増強は抑制された。Stat6 decoyが接着分子P-selectinの発現を抑制することによりリンパ球や好酸球などの炎症細胞の浸潤を抑制することが予想される。また、上記の実験系に抗ヒスタミン剤を加えてみてP-selectinの発現抑制効果を検討した。上記の結果を雑誌「アレルギー・免疫」2005年第12巻5号に掲載した。抗アレルギー剤の前処置は、ヒスタミン刺激ばかりでなくサブスタンスP刺激によるP-selecitn発現も抑制した。抗アレルギー剤は、ニューロペプタイドの働きをも抑制する可能性が示唆された。今後は、ステロイドがニューロペプタイドの働きを抑制するかどうかを検討する予定である。
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