研究概要 |
悪性黒色腫はメラノサイト系の悪性腫瘍で、早期から転移を起こしやすい悪性度の高い腫瘍である。これまでの報告で悪性黒色腫で報告された遺伝子異常の9割以上は、p16/p15,CDK4/6サイクリンD経路に関係する遺伝子異常であり、その増減により細胞周期が促進される方向に働いていると予想されている。従って、細胞周期に抑制的に働く因子で、p16/p15,CDK4/6サイクリンD経路に関係しない分子としてPLZF(promyelocytic leukemia zinc finger)に注目し解析を行った。 ヒト悪性黒色腫由来細胞株13種におけるPLZFの発現をRT-PCR, northern brot, real time PCR法を用いて検討したところ、すべて発現は検出限度以下であった。いっぽう、正常ヒト由来メラノサイトではPLZFは発現されていた。そこで、13種のメラノーマ細胞株のうち4種類を選択し、PLZF遺伝子を強制発現させたところ、ベクターのみを発現させた細胞と比較して細胞増殖の抑制が40-70%認められた。PLZF遺伝子導入されたメラノーマ細胞株では細胞周期関連蛋白であるサイクリンA,サイクリンDの発現が抑制されていること確認した。最後に、PLZFの腫瘍抑制効果がin vivoにおいてもみられるかについて、SCIDマウスへの移植実験で解析した。PLZF遺伝子導入細胞4種、コントロールベクター導入細胞4種をそれぞれSCIDマウスの背部皮下に移植し、経時的に腫瘍の大きさを測定した。コントロールベクター導入細胞と比較してPLZF遺伝子導入細胞では腫瘍のサイズは30日後で8-30%,60日後で17-44%と著名に腫瘍形成が抑制されていた。以上の結果より、転写抑制遺伝子であるPLZFはメラノーマの遺伝子治療に有効であることが予想された。
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