近年、難治性ざ瘡の炎症惹起過程における毛嚢壁の刺激および破壊に、好中球由来の炎症メディエーターとしての活性酸素(reactive oxygen species ROS)が関与していることが定量的に見出され、毛嚢の酸化還元系(redox status)の障害が難治性ざ瘡の病態に関与していることが示された。一方、ビタミンC(アスコルビン酸[Asc])およびその誘導体は、フリーラジカル消去作用、抗酸化作用などがあることが知られており、近年、尋常性ざ瘡の治療を速やかにすすめる補助手段のひとつとしてその外用療法が注目されている。現在使用されているAsc誘導体としては、化学的に不安定なAscを安定な型にした活性型ビタミンCであるAsc-2-O-α-グルコシド(Asc2G)などがあげられる。C14-ラベルを用いた経皮吸収実験の結果から、Ascは主に毛嚢脂腺系を通して皮膚内に吸収され、イオン導入の併用により短時間で真皮まで吸収され、その量は通常塗布の30倍まで促進させることが証明された。しかし、Asc誘導体の効果判定が容易でないためか、単独で治療効果が臨床で検討される機会は殆どなく、組み合わせ治療での有用性についてのみが報告されていた。今回、Asc誘導体(Asc2G)が単独でざ瘡の治療にどの程度の効果があるのかを検討するため、同意の得られた尋常性ざ瘡の患者20名に対してイオントフォレーシスにより10%Asc2Gを単独で導入し、その効果を経時的に全顔撮影装置3CCDデジタルカメラに記録することにより評価した。その結果、20症例中18例においてざ瘡皮疹の改善が認められ、更に20症例中17例で肉眼的に毛孔開大の改善を確認することが出来た。本療法の施行中、施行後に刺激感や炎症反応などの副作用は認められず10%Asc2Gはざ瘡治療の補助療法として有用なオプションであると考えられた。
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