研究概要 |
種々の濃度のフェルモキシデス溶解液とオイルの入ったファントムを様々な撮像パラメータにて撮像し,その信号強度を測定,解析した。その結果,TEは4.2msec,フリップ角は90度が最適条件であることが確かめられた。TRは信号強度に大きく影響しなかった。 15名の乳癌術前患者にFerumoxides1.5mlを乳房内投与し,MRリンフォグラフィーを撮像したデータをワークステーションに転送し,信号変化を測定,解析した。フェルモキシデスが最初のリンパ節(センチネルリンパ節)に到達し信号を低下させた時間は,投与後20分像でみられ,以後はゆるやかに低下した。非センチネルリンパ節にはセンチネルリンパ節より遅れて信号低下がみられた。これより,フェルモキシデス投与後20分以内に最初の撮像を行うのがよいことが示された。投与後翌日に撮像を行った症例では,リンパ節の信号低下は残存しておりフェルモキシデス沈着は持続していることが示された。 手術所見とMRI所見におけるリンパ節の数およびリンパ節の位置の一致について検討を行った。個数については,MRリンフォグラフィーでフェルモキシデスの取り込みがみられたリンパ節は平均2.7±1.5個(range 1-7個),手術中のRI法にて同定されたリンパ節の数は平均2.5±1.9個(range1-9個)であった。検討した11例中,MRIと手術所見で個数,部位ともに完全に一致していたのは4例,RIで数が多く同定されたものが4例,MRIで数が多く同定されたものが2例,残りの1例は両者で数は同じだったものの部位に不一致がみられた。MRリンフォグラフィーで同定されたセンチネルリンパ節は手術所見と高い一致を示していたといえる。1例において,MRIでも術中RI法でも流入が同定されなかったリンパ節(転移あり)が1個みられた。病理組織標本の検討ではこのリンパ節内は完全に腫瘍細胞に置き換わっておりリンパ門がふさがれた状態であったためと考えられた。この1例以外においては,転移があったリンパ節にはフェルモキシデスの流入がみられた。病理組織標本ではこれら流入がみられた転移リンパ節内は完全には腫瘍細胞に置き換わっていなかった。リンパ門がふさがれていないため流入が妨げられなかったと考えられる。 フェルモキシデスMRリンフォグラフィーは乳癌のセンチネルリンパ節同定に有用であった。ただし,転移リンパ節がある場合には,画像の解釈が困難となることがあるため,その適応には注意が必要である。
|