研究概要 |
昨年度の検討より,エネルギー依存性の細胞活動を反映する放射性ヨウ素標識薬剤の開発が有用であると考えられた.そこで本年度は,エネルギー依存性の膜輸送が治療効果を早期に反映するかを検討するために,エネルギー依存性のアミノ酸トランスポータであるシステムAに注目し,システムAの基質である[^<14>C]alpha-(methylamino)isobutyric acid (^<14>C-MeAIB)を用いて,治療効果判定薬剤の標的としての有用性を検討した.ヒト耳下腺癌細胞であるHSG細胞を移植したマウスに炭素線25Gyを照射し,照射前後における取り込みの変化を[methyl-^<14>C]methionine (^<14>C-Met)と比較したところ,いずれも照射5日後に有意な取り込みの減少を認めた.また,炭素線照射により誘発される炎症への集積を検討するために,腫瘍を移植していない脚へ炭素線25Gyを照射したところ,いずれの放射性薬剤も炎症への集積は示さなかった.このことは,先の腫瘍細胞への放射性薬剤の取り込みの減少は,炎症などの影響ではなく,腫瘍細胞自身の取り込みの変化を示しており,エネルギー依存性の膜輸送が治療効果を早期に反映することを示唆する.次に,培養HSG細胞を用いて,エネルギーの源となる細胞内総ATPの量と^<14>C-MeAIB,^<14>C-Metと取り込みの変化を検討した.インビトロの系におて,いずれの薬剤も,炭素線3Gy照射3日以降に有意な減少が観察されたのに対して,細胞内総ATP量は測定した5日間ではいずれの日においても有意な差は観察されなかった.以上の結果は両薬剤の取り込みは細胞内の総ATP量の低下が現れる前の状態において減少することを示唆しており,治療効果の早期診断薬剤の標的として,エネルギー依存性の膜輸送が有用であり,本輸送系を反映する放射性薬剤の開発が有用であると考えられる.
|