研究概要 |
正常肺に対するラジオ波焼灼術の影響を検討するため、家兎の肺にCTガイド下で経皮的にラジオ波焼灼を行い、合併症の有無を検討した。検討項目としてラジオ波焼灼による肺の化学的、あるいは機械的刺激に反応して呼吸促拍症候群(ARDS)が引き起こされる可能性の有無を、ラジオ波焼灼時間(高周波通電時間)による違い、ARDSの病初期に高値を示すというサイトカインのTNF-α,IL-1βの血中濃度を焼灼前と焼灼後に随時測定し、指標となりうるか検討した。 実験動物は日本白色種の雄家兎を用いる。鎮静はケタミシ(三共)の筋肉内投与にて行う。CT装置は当大学に既設の東芝社製X-Vigorを用いる。家兎をCT装置上に仰臥位で固定した後、CTガイド下ラジオ波焼灼療法を行う。高周波発生装置はSurgitorn FFPF(周波数3.8MHz、出力15W)で貸借して用いる。細径プローブは0.41mm径のステンレスワイヤーで、焼灼範囲を径1cmとした。 実験結果としてラジオ波焼灼における焼灼時間の違いによるARDSの発現率に差は認められなかった。ラジオ波焼灼における変化は焼灼範囲にとどまっており、周囲肺の変化は認められなかった。また、ラジオ波焼灼前後におけるサイトカインのTNF-α,IL-1βの血中濃度も実験に用いた家兎個体ごとに異なり、安定した値を示さず、ARDSの発現の指標となり得なかった。 今後は実験方法を再検討し、焼灼時間のみならず、焼灼範囲との関連の有無、採血方法の検討によるサイトカインの血中濃度の変化について再確認する予定である。また、追加実験としてVX2腫瘍細胞を用いた家兎孤立性肺腫瘍モデルを作成し、肺腫瘍に対するラジオ波焼灼による経時的な病理組織学的変化、腫瘍壊死効果等について検討する予定である。
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