研究概要 |
我々は基礎実験により血管内皮細胞内の転写因子NF-kappaBが内皮細胞遊走能を制御しており、この転写因子の活性化が抑制されることで、遊走能が向上することを以前報告した(Hamuro M, Polan J, Natarajan M, Mohan S : High glucose induced nuclear factor kappa B mediated inhibition of endothelial cell migration. Atherosclerosis 2002 Jun;162(2):277-87.)。一方、血管形成術後晩期に発生する再狭窄は血管形成術時に生じた内皮傷害が引き金となって生じる新生内膜肥厚が主たる原因であり、内皮の再生が速やかに完了するほど、新生内膜肥厚は軽度になるといわれている。そこで我々は基礎実験の結果を基に、NF-kappaB活性阻害剤を用いて内皮細胞の遊走能を向上させることで内皮化を促進し血管形成術後の再狭窄を軽減できるのではという仮説をたて、それを動物実験にて検討した。 方法は日本白色家兎の耳介動脈に24Gカニュラを挿入し内皮を剥離、7日後に同部の新生内膜肥厚を顕微鏡下に測定した。処置群は24Gカニュラで内皮剥離時に同カニュラからNF-kappaB活性阻害剤であるTosyl-Lys-Chloromethyl Ketone 1mM 1mlを動脈内投与、対照群では生理食塩水1mlを動脈内投与した(各群N=6)。 結果は阻害剤で処置した群の平均新生内膜圧が7.6±4.2μm、対照群の平均新生内膜圧が11.8±3.8μmで、阻害剤で処置した群は新生内膜肥厚が抑制されていた(P<0.05)。この結果からNF-kappaB活性阻害剤を用いて血管形成術後再狭窄を軽減できる可能性が示唆された。
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