研究課題/領域番号 |
15790695
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
徳永 えり子 九州大学, 大学病院, 助手 (50325453)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2003年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | HDAC阻害剤 / 乳癌 / TSA / SAHA / HER2 / Akt / MAPK / アポトーシス / トリコスタチンA / Her2 / neu |
研究概要 |
HDAC阻害剤はヒストン脱アセチル化酵素による脱アセチル化を阻害することにより、ある種の遺伝子発現を制御し、細胞周期停止やアポトーシス、細胞分化を誘導し、腫瘍の増殖を抑制することが知られている。本研究では主たるHDAC阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)、suberanilohydroxamic acid(SAHA)の乳癌細胞増殖に与える影響を、異なる性質をもつ乳癌細胞株MCF7(野生型p53、HER2低発現)、SKBR3(変異型p53、HER2高発現)細胞を用いて検討した。 (1)TSA、SAHAにより、MCF7、SKBR3ともに濃度依存性に増殖抑制を認めた。 (2)MCF7では細胞周期停止(G1、G2 arrest)、SKBR3では著明なアポトーシスが観察された。 (3)MCF7ではTSA、SAHA処理によりp53蛋白のアセチル化、p21の発現が誘導されたが、p27発現変化は認めず、p53活性化による細胞周期停止と考えられた。 (4)HER2高発現のSKBR3ではTSA、SAHA処理によりHER2、リン酸化HER2の発現はわずかに減少するのみであったが、その下流に存在するAkt、MAPKのリン酸化は著明に抑制されており、HER2-Akt、MAPK経路の抑制によるアポトーシス誘導がおこっていると考えられた。HER2/Akt経路の中間に存在するPI3K発現は変化していなかったが、PTEN発現は増加しており、HDAC阻害剤によるAktの活性化抑制にPTENの発現増加が関与している可能性が示唆された。 (5)MCF7細胞に対するCDDPの増殖抑制効果はTSAとの併用により増強され、アポトーシス増強によることが示された。 以上の結果より、HDAC阻害剤はp53活性化とHER2-Akt、MAPK経路の抑制という二つの異なる機序で細胞増殖を抑制することが示され、抗癌剤の効果を増強する可能性が示唆された。
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