研究概要 |
本研究では,hMLH1遺伝子転写制御に重要な3ヵ所のタンパク部位(FP3,FP6,CCAAT-box)に着目し,これら部位に結合する転写調節因子を検索・同定することを目的とした.前年度までに,FP3へのタンパク結合増強作用を有する因子としてp29 GCIP-interacting proteinを,また,FP6結合タンパクの候補としてTIF1αおよびC6orf145を見い出した.本年度は,TIF1αとC6orf145のDNA結合能とhMLH1遺伝子転写調節活性を調べるとともに,これらタンパクが転写調節因子として同定された場合は,p29タンパクとの相互作用を検討することを計画した. 酵母one-hybridスクリーニングにより得られたTIF1α及びC6orf145のクローンはいずれも不完全長cDNAであった.そこでまず,得られたcDNA配列を哺乳細胞発現ベクターに組み込みそれぞれのタンパク発現プラスミドを構築した.これらプラスミドを導入した hMLH1発現ヒト大腸癌由来細胞の核抽出物を用いてFP6配列をプローブとしたゲルシフト解析を行い,シフトバンドの増強もしくは新たなシフトバンドの有無を調べた.しかしながら,増強及び新規バンドのいずれも認められなかった.用いたcDNAクローンは不完全長タンパクとして発現するために,細胞内で不安定である可能性が高いと考えられた.これら候補遺伝子のDNA結合能並びに転写調製活性の確認には完全長cDNAが不可欠であるため,現在完全長cDNAのクローニングを行っている. これまでのところ,DNAに直接結合しhMLH1遺伝子の転写を制御する因子の同定には至っていない.しかしながら,本研究により複数の候補タンパクを見い出したことから,今後これらタンパクを中心にタンパク管相互作用を指標とした転写調節因子の検索も可能になったと考えられる.
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