研究概要 |
脳血管攣縮に於ける血管平滑筋の収縮機転に於いては、カルシウム非依存性収縮機構、特にRhoとRho-kinaseの脳血管攣縮への関与が大きく注目されている。現在までに報告したRho/Rho kinase系の上流因子となるスフィンゴ脂質、sphingosine-1-phospate(S1P), sphingosylphosphorylcholine(SPC)を含む脳血管攣縮原因物質の脳血管収縮機転について犬脳底動脈リング標本を用いた等尺性収縮実験、細胞内カルシウム-収縮同時測定、ミオシンリン酸化測定を用いて検討した。他に脳血管攣縮原因物質としてPlostagrandineF2a(PGF2a), 12-deoxyphorbol 13-isobutyrate(DPB), K+を用いた。PGF2aによる収縮反応はRho/Rho kinase系を介したカルシウム非依存性のメカニズムの関与が考えられた。KClによる血管収縮反応も実はRho/Rho-kinase系などのカルシウム非依存性のメカニズムが関与している可能性が考えられた。pan-PKC activatorであるDPBでは、細胞内カルシウムの上昇は全く見られず、この収縮に対しRho-kinase抑制剤は効果が見られなかった。 Rho-Kinase抑制剤で抑制されない、強力な経路の存在が示唆された。SPC, S1Pのスフィンゴ脂質による血管の収縮機転には違いがみられた。S1P収縮においては収縮早期に微弱な細胞内カルシウム濃度の上昇がみられるが、SPCではそれが全くみられない。Y-27632の効果はSPCでより強く、しかしミオシンのリン酸化程度の解除に関しては大きな差はないと考えられた。これらの結果から、SPCによる血管収縮機転はRho/Rho-kinase系への依存性が高く、S1P収縮ではカルシウム依存性経路が一部関与していることが示唆された。
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