研究概要 |
〔目的〕パーキンソン病の細胞移植による治療はまだ不明な点が多い.またドナー細胞供給の観点から倫理的側面を解決するための異種移植も検討されているが,解明されていない.今回,我々はミニブタ脳よりNeurosphere法を用いて,神経幹細胞を取り出し,パーキンソン病モデルの小型サル,common marmosetの脳内に異種移植した. 〔方法〕生後3日以内のクラウン系ミニブタを除痛後,断頭.脳を摘出し冠状連続切片を作製した.Nestinにて免疫染色を行い,神経幹細胞の局在を検討した.また採取された細胞塊をNeurosphere法で無血清培地にて培養した.培養液にはbFGF, EGF, LIF及びB27を添加し,neurosphereの形成を確認した.移植群はMPTPを投与されたサルの両側線条体に細胞塊を定位的に移植した.コントロール群はMPTPを投与されたサルに培養液を同部位に注入した.処置1ケ月後の自発運動量は赤外線センサー付きゲージにて測定した.また神経学的所見はakinesia scoreとして評価した. 〔結果〕MPTP投与前のコントロール群と移植群の平均自発運動量はそれぞれ1509.5±894.7,1477,4±658.4counts/5hrで有意差はない.MPTP投与後は両群とも有意に低下し,それぞれ335.7±121,5,312.1±106.3であった.またakinesia scoreは投与後,有意に上昇した.移植後はコントロール群は有意な変化はなかったが,移植群において平均自発運動量及びakinesia scoreにおいて,やや改善を示した. 〔結論〕パーキンソン病モデルのcommon marmosetの運動障害に対し,ミニブタ脳の神経幹細胞の異種移植により,若干の改善効果を示した.しかし本研究では長期の運動機能改善効果が不明であり,今後のさらなる研究が必要と考えられた.
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