研究概要 |
臨床研究に関しては、研究期間中がん性落痛患者(CP)12症例を対象に、加えて中枢性疼痛[とくに視床痛症候群(TP)]患者16症例も同様にradiosurgeryによる下垂体照射を行い、治療としての効果・安全性について検討した。全症例に160-180Gyを最大線量とし照射を行った。CP群に関しては、全症例で痩痛緩和が認められ、実に80%に完全除痛が見られた。また、TP群の75%に初期効果が見られたが、最終的に完全除痛が認められたのは全体の25%のみであった。合併症に関してはCP群では見られず、TP群における3例(17.6%,に軽度の下垂体機能不全を認めた。両治療群とも、線量による効果・合併症に有意差は見られなかった。CP群に関する治療の有用性は認められた。しかし、MRSやβ-endorphine, ACTHなどによる「刺激性作用」の証明までには至らなかった。 基礎研究に関しては、MRI対応ラット専用フレームを用い、一側線条体をターゲットとして高線量照射(150Gy)を行った。これにより、フレームシステムとしての精度・照射位置確認を行い、、Turning behaviorと組織壊死出現時期の相関性が見出せた。さらにMRI直視下でのターゲティングでは照射後変化に、若干のばらつきが認められたことから、いわゆる定位脳手術の概念をラットでも応用し、計算値と実測値から再現性のあるターゲティングを行えるようにできた。現在、ようやく比較的低線量照射(60Gy)を行い始めている。これにより、「破壊性変化」を伴わない「生物学的刺激性変化(neuro-modulation)」を証明し得る準備が整った。
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