研究概要 |
A.研究目的 変形性関節症(OA)の病態には軟骨細胞に対するメカニカルストレス、酸化ストレス、炎症性サイトカインによる刺激が密接に関与している。本研究はこれらanabolic factorとcatabolic factorの病態への関与を詳細に検討し、負に傾くバランスを制御することによって新規の治療法の可能性を探ることを目的とした。 B.方法 1)生後1週齢のWistar rat膝関節軟骨細胞を5日間培養後、周期的伸長ストレス(0.5Hz,7%伸張)を単独あるいはラットrhIL-4存在下に24時間負荷した。負荷前後の遺伝子発現の変化について、real-time PCRを用いてアグリカン、II型コラーゲン、誘導型NO合成酵素(iNOS)、Heme-Oxygenase-1(HO-1)、Cathepsin B、Cathepsin D、MMP-3、MMP-13について検討した。 2)6週齢のWistar ratの右膝関節において、MCLおよびACL切離およびによるOAモデルを作成した(OA群)。OA群の半数にはラットrhIL-4(10,50,100ng)を連日関節内投与(治療群)、残りの対象群は無処置とした。術後2、4、6週で膝関節を採取、肉眼的観察後、パラフィンブロックを作成し、大腿骨および脛骨関節面の組織化学的検討を行った。 3)(3)で作成したOA群のパラフィン切片を用いて、抗Cathepsin B抗体、抗HO-1抗体を用いた免疫染色を行った。また、酸化ストレスの指標として抗ニトロチロシン抗体による免疫染色を行い、対比した。 C.結果、D.結論 IL-4は正常軟骨細胞において、メカニカルストレスによって発現が亢進したiNOS、Cathepsin B、Cathepsin D、MMP-13を含む種々のcatabolic factorの発現をin vitroで抑制した。IL-4の関節内投与はラット実験的OAにおける軟骨破壊をある程度防止したが、用量依存性は認められなかった。一方で、IL-4の関節内投与はin vivoでのCathepsin B, HO-1の発現を抑制していた。これらの因子は軟骨破壊の治療ターゲットの一つとなり得ることから、IL-4の有効性が示された。
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