研究概要 |
メトトレキセート(MTX)は関節リウマチ(RA)の治療において,最も広く使用されている疾患修飾性抗リウマチ薬である。しかし、治療効果に個人差があり、有効な患者(responder)と効果が少ない患者(non-responder)がいること、予測不可能な副作用が生じることが問題である。薬剤感受性に影響をおよぼす因子の中で,薬物の吸収過程および体内分布に重要な働きを担う輸送タンパクであるP-glycoprotein(P-gp)の機能が注目され、MTXの細胞内輸送でも重要な役割を果たしている。P-gpをコードする遺伝子はABC(ATP-binding cassette)の一種であるABCB1遺伝子である。本研究の目的はABCB1遺伝子の一塩基多型(SNP)であるexon26(C3435T)がRA治療におけるMTX感受性や副作用発現に影響を与えているかを検討することである。MTXで治療を行った124人のRA患者を対象とし、ABCB1 C3435T SNPとMTX感受性および副作用発現について解析した。変異型ホモ接合体"TT"の症例では野生型ホモ接合体"CC"の症例と比較して,単変量解析で統計学的有意差(p=0.002)をもって,non-responderが多かった。多変量解析でも統計学的有意差(補正後オッズ比10.2,95%CI:2.2〜45.3,トレンドp=0.003)をもって,non-responderが多かった。副作用においては有意差を認めなかった。ABCB1 C3435T遺伝子診断をMTXの至適投与量の決定や生物学的製剤の導入の指標にできる可能性がある。今後,薬物作用機序に関する研究が必要である。
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