研究概要 |
平成15年度に確立したマウスの頚動脈小体摘出標本を用いたパッチクランプ記録法を用いて,glomus細胞のvoltage-gated K currentを記録し,その特長について調べ,DBA/2J系およびA/J系マウスについて比較検討した。 マウスのglomus細胞で観察されるvoltage-gated K^+ currentは,非特異的なK^+チャネル拮抗薬である4-Aminopyridineで強く抑制され,Ca^<2+>活性型高コンダクタンスK^+チャネル拮抗薬であるiberiotoxindでも強く抑制され,さらにこの両者の併用により完全に抑制された。これらのことは,マウスのglomus細胞におけるvoltage-gated K^+ currentの成分はA型K^+チャネルおよびCa^<2+>活性型高コンダクタンスK^+チャネルより構成され,その大部分がA型K^+チャネルであることを示唆している。そしてこのvoltage-gated K^+ currentは低酸素負荷(酸素濃度10%)やAChの暴露により可逆的に抑制された。DBA/2J系およびA/J系マウスのvoltage-gated K^+ currentの特徴について比較検討したところ,以下のことが判明した。1)voltage-gated K^+ currentの大きさに差は認められなかった,2)低酸素負荷により反応を示すglomus細胞の割合はA/J系マウスと比較してDBA/2J系マウスで有意に多かった,3)AChに反応を示すglomus細胞の割合はA/J系マウスと比較してDBA/2J系マウスで有意に多かった。以上の結果から,glomus細胞のvoltage-gated K^+currentにおいてDBA/2J系とA/J系マウスに特徴的差異は認められないものの,コリン作動系を含めた低酸素応答に感受性を示すglomus細胞の相対的な割合はA/J系マウスと比較してDBA/2J系が有意に多いことが判明した。このことは,以前に報告した形態学的研究(DBA/2J系マウスは正常な形態を持っglomus細胞の数がA/J系マウスと比較して多い)と同様な結果であり,これらのことがDBA/2J系とA/J系マウスの低酸素呼吸応答の差に影響している可能性が示唆された。 これらの結果は,Neuroscience Letters誌やAdvances in Experimental Medicine and Biology誌に掲載され,Experimental Biology MeetingやNeuroscience Meeting等の学会で報告した。
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