研究概要 |
Thymidine phosphorylase(TP)は血管新生作用と抗アポトーシス効果を有する蛋白で、種々の固形癌で発現が増加し、予後規定因子となる可能性が報告されている。一方、Paclitaxel(PTX)によるTP発現増加の報告もあり、内分泌療法抵抗性前立腺癌(HRPC)培養細胞株(PC-3,DU-145)を用いて、PTX投与による細胞内TP発現がapoptosisに及ぼす影響を検討する。【方法】PTX(1x10^<-9>,1x10^<-8>,1x10^<-7>M)およびTP inhibitor(TPI)(1x10^<-5>M)処理後に、TP活性とcaspase-3,caspase-8活性とを比較し、細胞生存率およびapoptotic index(AI)をそれぞれMTT assay, apoptosis membrane alteration assayにて測定した。【結果】両細胞株において、PTX投与はTP高発現およびcaspase-3活性を誘導した。TPI添加によるTP酵素活生の低下は、PTXのIC_<50>をPC-3で1.5×10^<-8>Mから2.0×10^<-9>M、DU145で4.5×10^<-9>Mから1.0×10^<-9>M(p<0.05)と有意に低下させ、caspase-3活性およびcaspase-8活性をともに誘導し、AIを有意に上昇させた。【結語】HRPC培養細胞株においてPTX投与により反応性に上昇したTP酵素活性はcaspase-8活性を阻害するととで、PTXのapoptosis誘導経路と考えられているmitochondrial pathwayとは異なるapoptosis death-receptor pathwayを阻害し、PTXによapoptosis誘導効果を減弱させている可能性が示唆された。
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