研究概要 |
われわれは、約20,000のcDNAをspotしたmicroarrayを用いて、様々な病期、細胞分化度、予後の異なる淡明型腎細胞癌組織のgene expression profilingを行い、gene expression profilingは、淡明型腎細胞癌の予後と強く相関することを同定した。これを基に、統計学的解析を行い、淡明型腎細胞癌の予後予測可能な51の遺伝子からなる遺伝子群を同定した。これらは、いわゆるtraining setから導き出された遺伝子群であるため、われわれは、解析をしていない淡明型腎細胞癌、いわゆるtest setにおいても、これらの予後予測遺伝子群が、予後を予測可能かどうか検討した。各サンプルから得られたデータから、それぞれわれわれが同定した予後予測可能な遺伝子群の発現データを抽出した。それぞれの遺伝子の発現が、2群の鑑別にどれくらい関連があるか、また2群の中央値からどれだけ発現値が離れているかを計算し、これらを各群にvoteする"weighted votes"を行った。これらの総計としてprediction strengthを計算し,新しく解析した淡明型腎細胞癌が予後の良い群と不良群のどちらの遺伝子発現を持っているか統計学的に判定した。(Golub et al. Science Vol.286 531-537,1999)。新しく解析した淡明型腎細胞癌10例のうち経過観察期間が十分でない患者が含まれていたため、正確に予見された患者の割合は求めることができなかったが、2例は正確に予見され,一般に予後の悪いgrade 3の2例はpoor outcome groupに,一般に予後の良いgrade 1の2例はgood outcome groupと診断された。この予後予測可能な遺伝子群は、最初に検討したtraining setに比べて、精度はやや低下したが、淡明型腎細胞癌症例の予後予測がある程度可能ではないかと考えられた。現在、さらに症例数を増加し、予後予測遺伝子群そのものの再検討を施行中である。
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