研究概要 |
1.研究目的 我々はこれまでに、ヒト卵巣局所において卵巣周期毎のG-CSF蛋白およびG-CSF mRNAの局在や動態を検討し、この物質とヒト卵巣機能における局所調節機構との関連を示してきた。今後G-CSFの卵巣機能における役割を中心に、卵巣局所でのサイトカインネットワークの解明を進めていく。 まず、卵巣周期毎の卵巣内G-CSF receptorの局在・動態を、免疫組織染色法により検討し、G-CSFの作用時期を明らかにする。 G-CSFが性腺ホルモンといかなる関係にあるのか、ヒト顆粒膜細胞培養系を用いて、性腺ホルモン(hCG, E2,Progesteron,Fertinorm P)添加刺激実験を行い、G-CSFの産生能について24時間後、48時間後の培養液上清におけるG-CSFの濃度測定により検討を行い、その関係を究明する。 また、卵巣機能の局所調節因子と推測されている他のサイトカイン(TNF-α,IL-1β,IL-6,GM-CSF,)を選びG-CSF濃度測定後の残りの培養液上清を、24時間後、48時間後の培養液の上清を回収し、濃度測定を行い、G-CSFあるいは性腺ホルモンとの関係を究明する。 結果自然月経周期において卵巣組織中に発現するG-CSF mRNAの相対量は、卵胞期後期で他の卵巣周期すべて(卵胞期前期、排卵期、黄体期)と比較して有意(P<0.001)に上昇していた。また、排卵直前における卵胞液中濃度が、血清に比べ高かったのは、G-CSF、IL-6、M-CSFであり、このうちG-CSFで最も高い有意差が認められ、その中でもG-CSFで最も大きな濃度較差が認められていた。 添加して培養した群ではG-CSFに関して有意差は認めなかった。HCGを添加して培養した群でIL-6のみが48時間後に33.01±18.3S.E.となりIL-6の上昇傾向(p-0.05)が認められた。他のサイトカインでは有意差を認めなかった。 考察 G-CSFは卵胞発育の最終過程において卵巣局所で発現され、排卵後期に最も高くなるため、排卵に際し最も重要な働きをしていることが示され、不妊の治療の際にG-CSFによる治療の効果がある事が予想される。また、顆粒膜の培養においてHCGによるIL-6の上昇傾向が認められた。G-CSFとの関連は不明であったが、排卵の際にIL6がhCGにより増加し排卵に関連しているものと思われる。
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