研究概要 |
レーザーキャプチャー・マイクロダイセクションとTaqMan PCRを用いて、遺伝性感音難聴をきたす疾患であるMELASの側頭骨組織から難聴遺伝子解析を行っている。MELASはミトコンドリアDNA3243変異に起因する母系遺伝の疾患で神経症状、筋症状とともに感音難聴をきたす。その側頭骨組織の病理学的所見としては、血管条の萎縮とラセン神経節細胞の減少が特徴的であった。しかしそれらから抽出したミトコンドリアDNA3243の変異率は必ずしも組織学的所見と一致するものではなく、個々の細胞レベルでの検討も必要であると考えられた。 今回我々は、これまでにMELAS内耳の蝸牛有毛細胞、血管条、ラセン神経節細胞などの各組織からLaser Capture Micro Dissection(LCM)により窒素レーザーで細胞を取り出し、そこからDNAを抽出した。さらにそれをミトコンドリアDNA3243をターゲットとしてTaqMan PCRを用いて増幅し、そこから各組織の変異率を同定することを試みた。その結果、内耳各組織におけるミトコンドリアDNA3243の変異率は、有毛細胞1.25%,血管条0.68%,ラセン神経節43.97%,球形嚢38.68%,卵形嚢9.60%,顔面神経2.79%,聴神経27.2%であった。これらの結果は血管条以外の組織では比較的病理学的所見と一致するものであったが、血管条においては相応しないものであった。また値の一定性についてもまだ安定はみられず、これまでの報告との相違も含めて、今後も検討を重ねていく予定である。 本年度はさらにミトコンドリア遺伝子7511の異常により非症候性感音難聴をきたした側頭骨標本についても同様の解析を行っており、現在検討中である。
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