研究概要 |
ラット網膜光障害により水イオンチャネルであるアクアポリン-1(AQP-1)が網膜内でどのように変化するか調べた。まず,Splague-Dawley(SD)系のラット(雄,8週齢)に3,000luxの白色光を24時間照射して網膜に光障害を起こした。照射開始12時間目,照射終了直後,照射後1,3,7日目に眼球を摘出して切片を作製した後,免疫染色を行った。また,Pre-embedding法によりAQP-1の局在を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した。未照射の網膜ではAQP-1は外顆粒層にのみ観察された。照射開始12時間目の網膜では外顆粒層に加え,視細胞内節および外節にも強い反応が観察された。照射終了直後には視細胞内・外節の反応は弱くなったが,視細胞外節の色素上皮細胞と隣接する部位にのみ帯状に強い反応が観察され,TEMでも,視細胞外節のディスク上に強い反応が見られた。その後,視細胞内・外節に反応は観察されず,外顆粒層の反応は照射後1日目以降やや弱くなった。網膜のその他の部位には反応は観察されなかった。更に,増加したAQP-1が光照射によって破綻した網膜血液関門より流入した血漿成分の排出に関与しているかどうか確認するため,光照射後のラット静脈中にトレーサーとしてペルオキシダーゼを注入し,TEMで網膜内に反応が見られるかどうか観察した。網膜色素上皮細胞および網膜内にはペルオキシダーゼの反応産物は見られなかったため,網膜血液関門の破綻が生じていない可能性が高く,AQP-1は他の原因により生じた水の排出に関係していると考えられた。更に、SD系のラット(雄,6ヶ月齢)より視細胞を単離し,免疫染色を行ったが,陽性反応は見られず,in vivoとin vitroではAQP-1の発現が変化することがわかった。以上のことよりAQP-1は周囲の環境変化に応じて発現を変化させていると考えられた。
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