研究概要 |
歯胚発生段階における,基底膜と形態形成,細胞分化との関連を明らかにすることを目的に,IV型コラーゲンα鎖の局在と消長を免疫組織化学的に観察するとともに,各種サイトカイン,Notchシグナル伝達系に関わる遺伝子等の発現について研究を行った。 歯胚発生段階における上皮基底膜には,IV型コラーゲンα鎖の部位および時期特異的な組み合わせが存在し,特にエナメル上皮基底膜に含まれるIV型コラーゲンα鎖の特異な組み合わせが歯胚の細胞分化と密接に関与していることが考えられた。BMP family遺伝子検索では,胎生11日歯胚ですでにBMP-4,BMP-7の発現が認められ,胎生12日でBMP-2の発現も認められたことから上皮間葉相互作用にBMP family遺伝子が関与している可能性が考えられた。また,骨形成に必須と考えられている転写因子Cbfa1遺伝子の検索では,歯牙形態形成と基質蛋白発現にCbfa1が密接に関与していることが示された。しかしCbfa1ノックアウトマウス歯胚の解析からその作用機序は骨芽細胞と異なっている可能性が示唆された。 細胞間相互作用に関わるNotchシグナル系遺伝子のIn situ hyburiduzation法による解析では,Notchシグナルは胎生期の歯胚に認められ,生後3日以降のエナメル芽細胞,象牙芽細胞では減弱する傾向が認められた。HES5遺伝子発現はすべての観察期間においてシグナルが認められないか,もしくは極弱いシグナルを認めたのみであった。Jagged2,Math1遺伝子発現はエナメル芽細胞,象牙芽細胞に強い発現を認めた。特にMath1はHES5と対照的に生後14日まで強い発現を保っていた。これら各遺伝子発現様式からJagged2を介したNotchシグナル経路はMath1に重要な影響を及ぼしており,歯芽形成の特異的な制御を行っていると考えられた。
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