研究概要 |
本研究は,成人性歯周炎患者の歯肉縁下プラークから分離・培養した口腔トレポネーマの病原因子の一端を明らかにすることを目的として,これら口腔トレポネーマの外膜画分中の宿主細胞活性化因子を抽出・精製し,構造を調べるとともに,同タンパク質の生物学的諸活性について,種々のヒト歯周組織構成細胞を用いて検討しようとするものである. 本年度は以下の結果が得られた.1.Treponema denticola, Treponema vincentiiおよびTreponema medium菌体からTriton X-100およびTriton X-116を用いて外膜抽出画分(OME)を得た.2.これらOMEをプロテアーゼ処理すると細胞活性の低下がみられた.3.T.medium由来OMEを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてフラクション1〜70に分画し,マウスToll様受容体(TLR)2発現Ba/F3細胞を用いてTLR2活性画分のスクリーニングを実施したところ,フラクション57(Tm-FR57)にTLR2を介した細胞活性化,フラクション45(Tm-FR45)に細胞傷害活性がそれぞれみられた.4.Tm-FR57でヒト歯肉上皮細胞および歯肉線維芽細胞を刺激すると,弱いながらもIL-8産生の誘導がみられた. 現在,Tm-FR57およびTm-FR45断片化ペプチドをHPLCにて分離・精製後,得られたペプチドのN末端アミノ酸配列の解析を進めている.
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