研究概要 |
(目的)PAD-S31は670nmに吸収波長帯を持つ新しいphotosensitizerである。我々は口腔内腫瘍に対するPAD-S31を用いたPDTの効果をin vitroおよびin vivoで検討し、さらにapoptosisを誘導するかどうかを検討した。(方法)PAD-S31とともに2時間培養した各種ヒト口腔内腫瘍細胞株(SAS,HSC-4)、浜松ホトニクス社の半導体レーザーPDT HLD-1を使用し、670nmのレーザー光線の照射を行い、WST-8assayにて細胞障害性を検討した。また、apoptosisを誘導しているかどうかを検討するためにTUNEL染色およびヒストン結合性DNA fragmentのELISA assayを行った。さらにシステインプロテアーゼの一種であるcaspaseの各種基質とtetrapeptide caspase inhibitorを用いてapoptosisのsignal pathwayの検討を行った。次にヌードマウスの皮下に各種ヒト口腔内腫瘍細胞株を植え腫瘍塊を作成し、8mg/kg PAD-S31を尾静脈投与2時間後にレーザーを照射し、腫瘍塊に対する効果を検討した。また、照射後の組織標本をTUNEL染色しapoptosisが誘導されているかどうかを確認した。(結果)PAD-S31を用いたPDTは、各種ヒト口腔内腫瘍細胞株に濃度、照射量、時間依存性に強い細胞障害効果を示し、優位にTUNEL染色陽性細胞が確認され、ヒストン結合性DNA fragmentの増加が認められた。また、HSC-4においてcaspase6,8,9の活性化は見られなかったが、caspase3の活性が上昇しcaspase inhibitorによってヒストン結合性DNA fragmentと細胞障害性の低下を認めた。さらに、腫瘍塊に対しても強い抗腫瘍効果を示し、TUNEL染色陽性細胞の有意な増加を認めた。(結論)PAD-S31を用いたPDTは、in vitroおよびin vivoにおいて口腔内腫瘍細胞に対し強い抗腫瘍効果があり、またcaspaseを介したapoptosisを誘導した。
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