研究概要 |
象牙質に対するレーザー吸収特性の検討を目的として,ヒト新鮮抜去歯から厚さ5μmの健全象牙質と齲蝕象牙質のプレートをそれぞれ切り出し,反射ATR法FTIR(赤外分光フーリエ解析装置)を用いて分析した.その結果,健全象牙質と齲蝕象牙質の吸収特性に顕著な違いは認められず,2.5〜12.0μmの波長帯では,3μmと10μm付近に大きな吸収ピークが認められた.この結果から,象牙質の切削には波長2.94μmのEr : YAGレーザーが適していることが確認された.しかし,2.5μm以下の波長帯においては反射法FTIRではノイズが大きく実質的は測定が出来ないため,今後,透過法FTIRにて分析していく予定である. ルーザーの齲蝕原因菌に対する殺菌効果の検討を目的として,代表的は齲蝕原因菌のひとつであるStreptococcus mutansに対してレーザーを照射した.使用した供試菌はStreptococcus mutans・JC2株で,これを1×10^9CFU/mlとなるよう調整した.この菌液5μlをオートクレーブにて滅菌した直径6mm,厚さ0.12mmの濾紙に浸透させ被験ディスクとした.このディスクに波長.1.67μm,2.94μmおよび両波長を同時に照射した後,ディスクを1mlの滅菌生理食塩水中に浸漬,PBSにて段階希釈し,MS寒天培地に塗抹,嫌気的に72時間培養した.培養修了後,培地上に形成されたコロニー数を計測,非照射群と比較しレーザー照射による殺菌効果の指標として用いた.レーザー照射の効果は,いずれの照射条件においても認められ,コロニー数は最大で非照射群の1/20に減少した.また,レーザーの殺菌効果は出力に依存する傾向を示した.今後,象牙質透過性を有する波長帯におけるレーザーの殺菌効果と至適照射条件の検討およびその効果深度について明らかにしていく予定である.
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