研究概要 |
間葉系幹細胞(MSC)の骨分化に対する各種の担体(ヒアルロン酸,ハイドロキシアパタイト,βTCP)の影響を検討したところ,培養系においてはβTCPがMSCの石灰化を促進させることが判明した。これは特異的骨分化マーカーのプライマーを用いたRT-PCRを用いた解析から明らかとなった。一方,焼結ハイドロキシアパタイトには石灰化促進能は認められなかった。ヒアルロン酸にはMSCの石灰化促進能は認められないが,プロテオグリカンと組み合わせることで著しく弾性が高まることが判明した(Biorheology,2004)。また担体と細胞を生体内へ移植する際にはMSCが確実に担体に接着していることが必要となるが,それには植物レクチンの一種であるコンカナバリンA (ConA)とインゲンマメレクチン(PHA-E)の処理が有効であることが判明した(Exp.Cell.Res.,2004)。またMSCを大量に増殖させるためにはフィーダー細胞につくらせた細胞外マトリックス上にてMSCを培養することが有効であることも判明した(Biochem.Biophys.Res.Com.,2004)。さらにMSCのソースとしてはヒトの顎骨骨髄から採取した細胞には高い骨分化能があるが,軟骨や脂肪には分化しづらいことから顎骨由来のMSCも骨再生のための細胞として有効であることも判明した(J.Bone Mineral Res.,2005)。 臨床研究のモデルとして,ラットの大腿骨から採取したMSCをβTCPに付着させ,頭頂骨にシリンジを用いて注入したところ,約4週間で新生骨形成が認められ,9週間では移植された頭頂骨の骨と見分け難い程の成熟した骨が形成されていた(第112回日本補綴学会発表,2004年10月)。この侵襲性の低い骨増生法は例えば高齢者の高度吸収顎堤の骨を増生させる方法として有効と成り得ることが示された。
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