研究概要 |
口腔内状態の改善は,咀嚼に影響を与えるばかりではなく,身体活動や精神活動における影響ひいてはQOLにまで影響を与える可能性が示唆されている.そこで,まず咀嚼機能改善前の患者において最大咬合力によりグループ分けを行い,認知情報処理過程の指標である事象関連電位(event-related potential ; ERP)の成分であるP300や反応時間(reaction time ; RT),反応時間の標準偏差(reaction time standard deviation ; RTSD)を用いてグループ間で比較検討した.被験者は脳に疾患既往のないことを問診で確認した欠損を有する健常者である.咬合力測定システム(FPD-703^R)を使用して得られた最大咬合力を平均し,平均以上を高咬合圧群,平均以下を低咬合圧群としERP成分を比較検討した結果,低咬合圧群に比べ高咬合圧群のP300潜時(Cz)が高い傾向を認め,最大咬合力の違いが認知情報処理時間に影響を与える可能性が示唆された.次にまた認知情報処理過程についてP300潜時,P300振幅,RT,RTSD,最大咬合力,年齢を変数としてグループごとに主成分分析を行い,グループごとの様相について比較検討を行った結果,両グループの認知情報処理過程に関連する因子の違いについてERPを用いて客観的に示すことができた. 咀嚼機能改善前の患者において新義歯が装着され調整が終わった状態で,再びERP等を測定し,治療前後について比較検討を行った結果MMN面積において治療前後に異なる傾向をみることができた。以上より咀嚼機能改善により事象関連電位の出現傾向に違いを認めることから,咀嚼機能改善が脳機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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