研究概要 |
方法:気管挿管麻酔下で口腔・顔面手術予定の患者32例をロ腔内洗浄群(n=16)、口腔内非洗浄群(n=16)に無作為に割り付け、PCR(polymerase chain reaction)法および培養法によって病原微生物を検出した。口腔内洗浄群では術前に、電動歯ブラシ装置により自動的にポピドンヨード液を供給しながら、歯磨き、歯周組織・頬粘膜・舌のスクラブを行った。また、術後は1日2回、ポピドンヨード液によるすすぎ洗浄を行った。なお、手術後、32例全例にセファゾリン(3g/日)を5日間投与した。 結果:まず、口腔内洗浄前32例のうがい標本から病原微生物を検出した。PCR法では肺炎球菌が87.5%,インフルエンザ菌が68.8%,緑膿菌が53.3%,Porphyromonas gigivalisが40.6%で検出された。一方、培養法では黄色ブドウ球菌が34.4%,MRSAが9.4%,表皮ブドウ球菌が56.3%,MRSEが15.6%で検出された。 手術前後の病原微生物の変動を測定した結果、口腔内洗浄群では、PCR法による検討で、肺炎球菌、インフルエンザ菌の有意な減少が確認された。また、培養法による検討では、黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌の有意な減少が認められた。一方口腔非洗浄群では、PCR法による検討で、肺炎球菌、インフルエンザ菌の減少は認めず、また、培養法では表皮ブドウ球菌の減少は認めたものの、緑膿菌やカンジダの検出率はむしろ増加した。 考察:今回、気管挿管麻酔例に対して、ポピドンヨード液を用いて機械的および化学的にロ腔衛生処置を行ったところ,呼吸器感染症の主要原因微生物が減少することが明らかになった。
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