研究概要 |
顎口腔領域のMR画像において,歯科用補綴物による金属アーチファクトにより診断が困難となることがある.アーチファクトは3次元的に出現するものであり,さらに,口腔内にはインレー,クラウンなどさまざまな形態を有する金属が存在し,その出現様相は極めて複雑である.従って,その出現様相を3次元的に把握する必要があると考え,本研究を実施した.1)金属の形態がアーチファクトの出現様相に与える影響:1辺5mmの立方体とそれと同体積の球体を歯科用合金(金合金)において作製し研究に供した.すなわち,自製ファントム内に寒天にて固定し,MRの撮像を行い,アーチファクトの出現様相を3次元的に観察した.その結果,アーチファクトの基本的構造は両者ともに同様であり,金属を中心とした低信号領域と,静磁場方向にみられる高信号領域より構成されていた.その形態は両者間で差を認めたが,体積においては,有意差は認められなかった.2)抜去歯牙のMR画像:全部鋳造冠によるアーチファクトの出現様相を観察するに先立ち,充填処置等が施されていない抜去した下顎第一大臼歯のMR画像を撮像し,3次元的に観察した.エナメル質,象牙質,セメント質の区別は不可能であり,無信号領域として観察された.一方,歯髄腔は中間信号を呈した.自製の体積測定器を用いて,実際の歯牙と3次元MR画像の体積を比較したところ,両者に有意差は認められなかった.3)全部鋳造冠のMR1画像の観察:アーチファクトの基本構造は立方体,球体と同様であった.すなわち,金属体を中心とした無信号領域と,その静磁場方向(周波数エンコード方向)に高信号を呈する領域が認められた.4)撮像方向が金属アーチファクトの出現様相に与える影響:静磁場方向と周波数エンコード方向が垂直である場合と水平となる場合のアーチファクトの出現様相の比較を行った.高信号を呈する領域は,低信号を呈する領域の静磁場方向に認められたが,両者の形態に差が認められた.3次元画像における体積は,周波数エンコード方向と静磁場方向が平行な群において有意に大きかった.
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