研究概要 |
小児の顎運動の特徴を明らかにするために,顎口腔機能に異常を認めない個性正常咬合を有する混合歯列期小児10名,永久歯列初期小児10名,20歳未満の永久歯列期小児2名,永久歯列期成人10名と顎機能障害を有する永久歯列初期小児3名について顎運動測定を行い,顎口腔機能の評価を行うとともに,側方滑走運動時の3次元的な顆頭運動について検討した. 顎運動測定には6自由度顎運動測定器(松風社製、MM-JI-E)を使用した. 顎運動の解析点は切歯点,作業側と非作業側の運動論的顆頭点とした. 結果,切歯点と顆頭点での限界運動範囲は成長とともに増加した.最側方咬合位での作業側顆頭移動量は成長とともに減少した.前方滑走運動時の矢状切歯路角と矢状顆路角,側方滑走運動時の矢状面と前頭面での切歯路角は成長とともに増加した. 側方滑走運動時の作業側顆頭移動量は成長とともに減少した.側方滑走運動時の上下方向への作業側顆頭移動量は成長とともに減少した.側方滑走運動時の左右方向への作業側と非作業側顆頭移動量は成長とともに減少した. 永久歯列期小児についても,切歯点および顆頭点ともに,滑走運動に関する解析項目で,成人と同程度の運動とは考えにくいデータが認められた. 顎運動の評価に,より有効なパラメータの検討をするため,顎機能障害を有する小児の顎運動測定もあわせて行った.限界運動範囲,側方滑走運動時の前頭面と水平面での切歯路角,3次元的な顆頭移動量について,正常者と逸脱した顎運動データの所見が認められた. 詳細については,いまだ永久歯列期小児や顎機能異常を有する小児の被験者数が多群に比べ少ないため,今後さらに被験者数を増やした上で,あらためて検討したい. 以上の結果から,小児の顎運動は成長とともに安定するものの,永久歯列期小児においてもまだ顎機能の発育に余地が残されている可能性があることが示唆された.
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