研究概要 |
本研究プロジェクトは,「ダウン症候群患者の早期老化による歯周病易感染性と活性酸素フリーラジカルとの関連性を検討すること」を目的として進められ,申請者はすでにmatrix metalloproteinase(MMPs)と歯周病との関連性において、健常者に比べダウン症候群患者歯肉組織,歯肉由来由来線維芽細胞のMMP-2活性が高いことを報告し、さらにそのメカニズム解明のために本プロジェクトにおいて活性酸素フリーラジカルの検出技術として電子スピン共鳴(electron spin resonance ; ESR)を駆使し,炎症性サイトカインであるIL-1β刺激によりダウン症候群線維芽細胞から産生される活性酸素フリーラジカルがIL-1βの濃度依存的に増大し,ダウン症候群線維芽細胞から産生される活性酸素フリーラジカル産生量は健常者の線維芽細胞より高いことを見出した。「活性酸素フリーラジカルとMMP-2活性との関連性」についてダウン症候群患者は健常者と比較して約50%Cu, Zn superoxide dismutase過剰産生しているといわれている。本研究プロジェクトにより活性酸素フリーラジカル生成量においても同様に約50%亢進していることをESR法により直接的に初めて証明した。この結果は単に歯周病発症のメカニズムに活性酸素フリーラジカルが関与するというだけではなく,ダウン症候群の早期加齢のメカニズムの解明を導く可能性からも注目に値する。すなわち,これまで報告された神経変性疾患との活性酸素フリーラジカルとの相関を含めて中枢神経機能に対する活性酸素フリーラジカルの病態生理学的役割の解明につながるものと考えられる。これら成果についてはJournal of Dental Researchに現在論文として2編投稿予定である。また、これまでのESR法による活性酸素フリーラジカル測定技術の臨床応用としての唾液の抗酸化測定にも成功しているので今後さらに発展させたい。
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