研究概要 |
実験方法 1.超微小硬度の測定 蒸留水中で4℃冷蔵保存した新鮮ヒト抜去上顎小臼歯の頬側面に,接触,注水,繰り返し速度10pps,先端出力50mJ/pulseの条件で,レーザーを照射し,リン酸処理することなく,シーラント材(Teethmate-F-1,クラレ)を填塞した.その後,試料をアクリルパイプ中に樹脂にて包埋し,歯軸に対して垂直に切断し,断面の鏡面研磨を行った.シーラントの接着界面から歯髄方向に向かって20・40・60・80μmのエナメル質の超微小硬度を,荷重条件1000mgfで1領域につき10点計測した.なお,コントロールとして同等の深さのエナメル質の硬度を測定した. 2.走査電子顕微鏡による観察 実験1で測定を行った試料に,さらに金蒸着を施し,走査電子顕微鏡で観察を行った. 結果および考察 レーザー照射後にシーラント材を填塞したエナメル質の硬度は,40・60・80μmの深さにおいてコントロールとの間に有意差はなかった.しかし,20μmの深さでは,コントロールに比べ,硬度が有意に低下していた. また走査電子顕微鏡で,50〜60μmの深さまでシーラント材の浸透が観察された. これまでの研究で,レーザー照射後のエナメル質は20・40・60μmの深さにおいて硬度は有意に低下するが,80μmの深さではコントロールとの間に有意差がないことがわかっている. これらのことから,レーザー照射後にシーラント材を填塞すると,50〜60μmの深さまでシーラント材が浸透し,これにより40・60μmの深さにおいて硬度が回復し,コントロールと同等の硬度となったと推察された.ただ,20μmの深さにおいては,レーザー照射の影響が強く,シーラント材を填塞しても完全には硬度の回復には至らないと考えられた.
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