研究概要 |
グラム陰性細菌のLPSは免疫系細胞を活性化し、IL-1βやTNF-αなどのの炎症性サイトカインを産生して破骨細胞を誘導する。破骨細胞の形成にはreceptor、activator of NF-κB ligand (RANKL)が促進的に関与している。またLPS刺激の細胞内シグナル伝達にはTLR2やTLR4が関与しており、TLR4遺伝子のmutationを持つC3H/HeJマウスはLPSに低応答性であることが知られている。今回はC3H/HeJマウスとC3H/HeN(LPS応答性)マウスの歯肉に歯周病原性細菌A.actinomycetemcomitans (A.a)由来LPSを投与して、それぞれの歯槽骨吸収と歯肉結合組織におけるIL-1β及びRANKL発現を比較した。A.a由来LPSを48時間毎に1、4,7,10回投与後、下顎骨を摘出して試料を作製し、H.E染色、TRAP染色及び免疫染色を施した。破骨細胞の活性吸収面ならびに免疫組織学的検索の結果、C3H/HeNマウスではLPSの投与回数が増すに連れて破骨細胞数が増加したのに対し、C3H/HeJマウスではほとんど変化がなかった。また、7、10回投与群におけるIL-1β及びRANKL陽性細胞数はC3H/HeNマウスと比較してC3H/HeJマウスは有意に少なかった。また同様にIL-6及,びTNF-αの歯肉結合組織における発現を比較したところ、C3H/HeNマウスではLPSの投与回数が増すにつれTNF-α陽性細胞数は増加する傾向にあったが、C3H/HeJマウスではいずれの免疫組織学的検索によっても陽性細胞数の著明な変化はみられなかった。以上のことよりA.a由来LPSによって誘導される歯槽骨吸収においては、TLR4を介してIL-1β、TNF-α産生やRANKL発現が調節されていることが示唆された。
|