研究概要 |
本研究の目的は,在宅酸素療法(HOT)利用者の生活の現状を把握し,利用者への支援システムのあり方を明確にすることにある。また,患者の生活の質(Quality of Life)の要素を明らかにし,患者の生活の質を向上させるための施策について検討する。 平成15・16年度は,HOT利用者に対して,生活状況と福祉サービスの利用状況および要望について調査を実施した。その結果,福祉サービスはあまり利用されておらず,また,HOT患者特有のサービスと提供している市町村も少なかった。そのため,疾患にあった福祉サービスの要望が強いことが明らかとなった。また,HOT利用者は高齢者が多いことから,サービス内容のわかりやすい説明が必要であることも明らかとなった。 平成17年度は患者の生活の質と禁煙の関係,および家族のサポートについて,HOT利用者および家族に対して面接調査を実施した。その結果,HOT利用者は喫煙者・元喫煙者(禁煙者)が多く,喫煙量を示すブリンクマン指数は平均1500本と,呼吸器疾患および癌発症のハイリスク状態であった。加えて,約10割がHOTを開始した後も禁煙できず,呼吸困難感を抱えながらも喫煙を続けていた。これらの喫煙者は,禁煙を強く希望していたが,禁煙についての正しい知識とサポートが乏しい状況であった。禁煙できたHOT利用者は,喫煙の身体への悪影響をよく理解しており,自身の病気の悪化を防ぐために禁煙していた。禁煙できた者は生活に対しても充実感を感じていた。また,禁煙できた利用者の家族は,禁煙に対して積極的に関与していた。 本研究では,HOT利用者を支援するためには,疾患に合った福祉サービスの提供と,福祉・医療サービス提供者から患者・家族への十分な情報提供が重要である。また,疾病の回復・悪化防止には,患者・家族の知識の向上と,家族のサポートが重要であることが明らかとなった。
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