研究概要 |
香りを負荷した温熱刺激を伴う看護技術の生体への効果を明らかにするために、本年度は特に入眠効果に焦点を当て、温熱刺激または、温熱及び「香り」の複合効果を検討した。 睡眠及び食事時間を調整した健康な男性7名を被験者とし、香りを負荷した足浴と付加しない足浴を実施し、脳波(01,02)、皮膚温(右手掌、胸部、左上腕、左下腿、左下肢)、血流量(右手掌)、心拍数を指標に香りの有無による入眠効果を比較した。室温(25〜27℃)、湿度(50〜70%)を保ち、照度も10ルクス以下に調整した実験室で、閉眼安静15分後に足浴を10分間施行し、その後30分間閉眼にて安静を維持した。香りを付加した足浴では、前年度作成した香り提示システムを使用し、足浴中に被験者が自覚しない程度の香りをマスクから流した(オレンジオイル0.05ml,流量60〜66ml)。 脳波の分析は、すべてのデータを30秒毎にFFTを実施し、θ波、α波、β波の周波数帯域別にパワー値を算出した。それらのデータから視察により睡眠段階を判定した。α波が消失し、低振幅θ波が出現する睡眠段階1を入眠期とした。皮膚温、血流量、心拍数は、5分間ごとに平均値を算出し、比較した。 その結果、脳波による睡眠段階評価では、香りの有無に関わらず、足浴後すべての被験者が入眠しており、足浴が入眠を促すことが考えられた。入眠開始時間は、香りの有無による差はほとんど認められなかったが、入眠持続時間では、7名中香りを付加した足浴の方が長かったものが5名と多かった。皮膚温、血流量、心拍数には、香りの有無による有意な差は認められなかった。これらのことより、オレンジの香りを付加した足浴は、循環動態に影響を与えることなく、従来の足浴と同様に実施でき、入眠時間の持続効果が期待できる可能性が考えられた。
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