研究概要 |
開腹術後患者における術後回復過程の客観的かつ容易な評価方法として,超音波検査による筋組織厚測定を試みた.測定部位は歩行活動時に最も重要な筋群として,大腿直筋上,大腿二頭筋上,長指伸筋上,ヒラメ筋上の下肢4ヵ所とした.胃および大腸手術を受けた対象患者28名は,術前・術後に下肢4ヵ所の筋組織厚がいずれも減少した.筋組織厚が最も減少し,臥床の影響を受けやすい部位は大腿直筋上であった.従って術後患者の回復程度を客観的に評価し,臥床の影響を肇けやすく臨床応用が可能な測定部位は,下肢4ヵ所のうち大腿直筋上と考えられた(広島大学保健学ジャーナル5(1),頁10-15,2005). 次に,大腿直筋上における超音波診断装置を用いた筋組織厚の精度を検証するため,健常者10人を対象に,1)異なる測定者間,2)同一測定者が繰り返し測定した場合,3)測定補助道具を用いた方法と用いない方法で繰り返し測定した場合の測定値の一致度について検討した.異なる測定者間の比較では,筋組織厚の有意差は見られなかった.同一測定者が日を替えて測定した2回の測定値は,筋組織厚で有意な正の相関が見られた.測定補助具の使用の有無による比較では,測定補助具を用いた方が2回の測定値間の一致度が高くなるものの,測定値そのものに影響が残る結果となった(The Journal of Nursing Investigation4(4),頁79-86,2005). 超音波検査法を用いた組織厚測定は,測定誤差を少なくする工夫が必要と考えられるものの,臨床での使用が可能と考えられた.術後の回復に影響を受けやすい部位は,下肢4ヵ所の中では大腿直筋上の筋組織厚と示唆された.現在,大腿前面の筋組織厚の減少と心理的な回復感としてSTAI得点を用いてその相関について現在分析中である.
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