研究分担者 |
松田 智明 茨城大学, 農学部, 教授 (50007788)
後藤 雄佐 東北大学, 農学研究科, 助教授 (80122919)
黒田 栄喜 岩手大学, 農学部, 教授 (90170125)
斉藤 満保 宮城県立農業短期大学, 教授 (50196010)
山本 由徳 高知大学, 農学部, 教授 (00093956)
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研究概要 |
2003年度の北日本太平洋岸を中心とした冷害の実態把握と,その異常気象下での水稲において観察された事象を整理し,今後,作物学的な解明が必要とされる点を抽出した.初めに,被害の大きかった北海道と青森県,岩手県,宮城県の気象を,イネの生育に関連させて解析した.特に,今回以上の大冷害となった1993年の気象と比較すると,2003年では7月下旬から低温が回復したことが大きな違いであった。したがって,2003年では,8月上旬も低温が続いた1993年に比べて被害が軽く済んだものと考えられた.このことから,1993年以降の10年間における栽培技術や品種の進歩が被害を軽減させたのではないことを示しており,今後,さらなる冷害対策技術の進歩の必要性が明らかとなった.そのような中で,水稲の低温感受性が強い時期を7月中下旬から外すために各県で指導され始めた「遅植栽培」が評価できた.さらに,北日本以外の日本各地で,2003年の異常気象が稲作に与えた影響も解析した結果,北陸地方では例年より低い気温が良質米生産に結びついた例も挙げられた.岩手県と宮城県で,冷害色が濃くなってきた頃から実施していた研究の中で,急遽,冷害を意識しての調査が行われ,その解析も本研究に取り込み,今後の,水稲冷害の作物学的な研究の方向性を論議した.そこで取り上げたものは,1圃場内での位置や生育状態などが関係する低温の影響の解析,花粉数と登熟の関係,出穂から開花までの日数と登熟との関係,低温下で登熟に至らなかった米の構造的解析などがある.これらの研究の中で,冷害に対抗する栽培技術としての深水栽培法も解析した結果,本栽培法が有望な技術として作物学的な研究を発展させる必要性が明らかになった.
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