研究実績の概要 |
本研究室では、ナス属野生種の細胞質を利用したナスSolanum melongenaの雄性不稔系統の開発、育成に関する研究を行っている。本研究では、この細胞質雄性不稔の研究において必要となる栽培ナスおよび野生種の細胞質を同定できる識別法の開発ために、葉緑体DNAのPCR-RFLP分析を行った。 供試材料として、4種類の栽培ナス‘長崎長’, ‘千両二号’, ‘Mireda’および‘Uttara’と11種類のナス属野生種S. incanum (LS4016, LS4018), S. macrocarpon, S. virginianum, S. torvum, S. aethiopicum, S. gilo, S. anguivi, S. grandifolium, S. violaceumおよびS. kurziiを用いた。これらの若葉からキアゲンDNeasy Plant Mini Kitを使用してDNAを抽出し、これを20ng/μlに調整してPCRを行う際の鋳型とした。その後、葉緑体DNAのtrnS-trnG, psbC-trnS, trnC-trnD, trnH-trnK, trnk1-trnk2およびtrnLの6領域において7種類の制限酵素 Alu Ⅰ、Hae Ⅲ、HinfⅠ、Mbo Ⅱ、Msp Ⅰ、Rsa ⅠおよびTaq Ⅰを用いてPCR-RFLP分析を行った。 葉緑体DNAのtrnS-trnG, psbC-trnSおよびtrnk1-trnk2領域では、供試した材料において増幅産物のバンドが複数みられたものがあった。このことから、目的の領域が特異的に増幅されなかったと考えられる。 葉緑体DNAのtrnC-trnD, trnH-trnKおよびtrnL領域では、供試した材料すべてにおいて増幅産物のバンドが1本明瞭にみられ、そのサイズはすべて同一であった。本実験で用いたすべての領域および制限酵素による消化において‘長崎長’, ‘千両二号’, ‘Mireda’および‘Uttara’とS. aethiopicum, S. gilo, S. anguiviおよびS. grandifoliumとS. violaceumおよびS. kurziiではそれぞれ同一のバンドパターンを示したため、これらはそれぞれ近縁であると考えられる。本実験において栽培ナスおよび野生種の細胞質の同定にtrnH-trnK領域のHinfⅠによるPCR-RFLP分析が有効であると考えられる。
|