研究課題
特別研究員奨励費
我々のグループは、感覚性脳室周囲器官のグリア細胞に発現するNaチャンネル分子であるNaxが、塩分摂取行動制御を担うNa+濃度センサーであることを明らかにしてきた。一方、飲水行動制御を担う脳内浸透圧センサー分子としては、TRPV1とTRPV4が報告されていた。これを検証するために、高張液(食塩水あるいはソルビトール液)を脳室に微量注入して、野生型マウスと3種のセンサー候補分子の遺伝子ノックアウトマウスにおいて、水分摂取行動の解析を行った。その結果、TRPV1は飲水行動誘発に全く関係しないこと、Naxが塩分摂取だけでなく水分摂取行動にも関与していることが明らかとなった。さらにTRPV4は、それ自身はセンサーではなく、Naxの活性化によってグリア細胞から放出されるエポキシエイコサトリエン酸を介して活性化する、Naxシグナルの下流分子であることが明らかとなった。本研究によって、浸透圧センサー分子については未解明であること、さらに新たに、Na+濃度上昇による飲水行動の誘発には、Naxシグナルに加えて、未知のNa+センシング機構が関与していることが判明した。そこで未知のセンサー分子の同定を目指して、次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析によって、感覚性脳室周囲器官特異的に発現する分子を探索した。センサー候補分子として、イオン輸送に関係する22個の分子を選び、その機能解析を行った。その結果、3つの脳内Na+濃度センサーの有力候補を同定した。また、原因不明の高ナトリウム血症を示す小児患者の中に、脳室周囲器官に対する自己抗体を有する者、3名を見出した。これらの患者では脳室周囲器官が自己抗体によって攻撃を受けていると推定される。脳室周囲器官が水分/塩分摂取行動の制御と抗利尿ホルモン分泌制御に重要な働きをしていることを示す新しい知見である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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